心理学で考える人材育成

人材育成については企業だけの問題ではなく、国策として厚生労働省も多くの取り組みをしています。キャリア形成サポートセンター事業ではセルフ・キャリアドック導入支援セミナー等、人材育成に軸を置いた人事評価制度セミナーなどを行っております。政府の主目的は非正規雇用の正規雇用への転換や、社会構造の変化に伴うジョブチェンジの支援など、労働環境の改善や失業者数減を目標としています。

さて、厚生労働省において従業員のキャリア形成において重要視しているものに、ジョブカードの作成やセルフ・キャリアドックという考え方があります。あまり聞きなれない方もいるかも知れません。セルフ・キャリアドックとは、企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、また、そのための企業内の「仕組み」のことです。(引用元:「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000192530.pdf)

形骸化した人事評価制度は不要である

ところで、2016年に職業能力開発促進法が改正されました。働き方についての定義が定められ「職業生活の設計とそのための能力開発」に働く人一人ひとりが当事者意識と実践の責任を持つことを求め、同時に組織にその支援の提供を義務付けるようになりました。先ほど、セルフ・キャリアドックでも触れましたが、従業員の主体的性をいかに引き出すかが課題とされています。また、職業能力開発促進法では、キャリアコンサルティングの機会の提供や支援、キャリアプランの設計と実現支援についても定義しています。厚生労働省が主幹となって無料セミナーを開催するなど、人材育成としての人事評価制度の在り方について課題意識を持っているというのがよく分かります。

弊社beep人事マガジンの「失敗する人事評価制度とはhttps://beep-hr.com/magazine/%E5%A4%B1%E6%95%97%E3%81%99%E3%82%8B%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E8%A9%95%E4%BE%A1%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%A8%E3%81%AF/」でも取り上げていましたが、従業員が100人以上の企業では7割以上の企業が人事評価制度を導入しています。今、課題となっているのは少子高齢化が進むなか、中長期的な観点での人材育成が求められています。厚生労働省が取りまとめた各業界別の「生涯現役雇用制度の導入に向けたマニュアル(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000123625.html)」においても人材育成について述べられています。何をどのように評価すべきか、テレワークや働き方改革なども人事評価制度の見直しを後押ししているように感じられます。また、終身雇用を前提とした従来の日本企業では、年齢や勤続年数に応じて給与や役職を上げる年功序列の考え方が一般的であったため、より、従業員の育成に焦点をあてた制度設計が必要になってきていると考えられます。

クランボルツ教授のプランド・ハップンスタンス理論とは

それでは、どのように従業員の主体性を養っていけば良いのか。答えは人事評価制度の仕組みの中にあります。もちろん、ノーレーティング評価など、従来とは違うスピード感をもった評価制度など選択肢は様々であり、何が正解かという肢はありません。OKRなども新しく提唱されている目標管理制度で、前衛的な企業が試行錯誤しながら新しい人事評価制度を刷新しています。ただ、共通するものはあるかと思います。それは従業員が主体性を持って成長できる環境を作ろうとしているかどうかという点です。アメリカの教育心理学者でスタンフォード大学の名誉教授であるクランボルツが1998年に提唱した「プランド・ハップンスタンス」理論というものがあります。直訳すると計画的偶発性理論です。この有名な理論では前提として3つの骨子があります。まさに主体性を問うものです。

  1. 予期せぬ出来事がキャリアを左右する
  2. 偶然の出来事が起きたとき、行動や努力で新たなキャリアにつながる
  3. 何か起きるのを待つのではなく、意図的に行動することでチャンスが増える

そして、その骨子に対して、キャリアを築くためには次の5つの行動特性が必要とされています。

  1. 好奇心(Curiosity):たえず新しい学習の機会を模索し続けること
  2. 持続性(Persistence):失敗に屈せず、努力し続けること
  3. 楽観性(Optimism):新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること
  4. 柔軟性(Flexibility):こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること
  5. 冒険心(Risk Taking):結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと

どの行動特性も前向きで自主的な価値観によるものです。これを組織的に考えた時に、人事評価制度やOKR(目標管理)の中に上手く組み込むことで、従業員の主体性を引き出せるようになるのではないでしょうか。

大切なのはアクションすること

「冒険心」という行動特性からも推察できますが、まずはやってみることが大切です。人材育成は人事担当者にとって大きな課題です。既に人事制度がある場合はそれを刷新するのには相当なエネルギーを要します。また、制度がなければ一から作り上げていく、これもまた相当な時間を要します。しかし、「プランド・ハップンスタンス」理論に基づくと、やらないことには何も始まらないということになります。何より大切なのは失敗を恐れることよりも、やってみて成功するまで柔軟にチャレンジを続けていくことです。実践あるのみとはよく言いますが、やってみないと分からないことの方が多いのではないでしょうか。企業の数だけ組織風土もそれぞれ違うことでしょう。どんなやり方がその組織に当てはまるのかはやってみないことには分からないと考えられます。

システム化でより強い組織を作る

そして、大切なのはスピード感です。「プランド・ハップンスタンス」理論ではスピード感について、骨子や行動特性では触れていませんが、経営という観点で考えた時に、このスピード感が大変重要になってきます。営業部門や経営企画部門など売上に直結するような部門の場合、特にスピード感を意識するかも知れませんが、総務や人事部門ではコストカット意識はあるものの売上に関与することが少なく、スピード感が少し弱いと感じます。

より、グローバル化していく、これからの時代、スピード感は大変重要なものと考えていくべきでしょう。人材育成は中長期的な観点で行われるものですが、1on1やOKR(目標管理)において、その進捗管理は期単位で行う必要は特にありません。毎月でも週次でも良いでしょう。1年に1回、その時に多くの時間を割いて人材育成のために人事評価などを行うより、日常的に短い時間の中でスピード感を持って行う方が、より、人材育成の効果が目に見えて分かりやすくなることでしょう。そのためにはシステム化をすることで、より簡単に人材育成が行える環境を整えていかなければなりません。

 従業員にとって成長できる環境というのはとても魅力的な職場であると考えられます。人材育成は人事評価制度の仕組みに大きく左右されます。弊社は、目標管理(OKR)や1on1など、クラウドでの支援を得意とし、人事評価制度や人材育成に関するHR領域にて企業を支援しております。組織作りや人事評価制度の刷新など悩みごとがございましたら、気軽に弊社までお問合せください。